20歳の夏、コンクールを終えて


Moeka.U(大3)

 私は第16回フレッシュ音楽コンクールのアマチュア部門で銅賞を受賞しました。

正直、自分がピアノでこんな賞を獲れる日が来るとは思っていませんでした。

拙い文章で恐縮ですが、今回のコンクールで私が感じたことや学んだことを共有しようと思います。

 

  今年コンクールに出てみようと思ったのは、今年がコンクールに挑戦できる最後の年であったのが理由です。

私は大学3年生で、学業との両立を考えると今年がコンクールに本気で向き合える最後のチャンスでした。

しかし、ただコンクールに出るのではなく、今回は本気でやってみようと思えたのは、望月先生が今年は賞を狙えると言って下さったことがきっかけだったと今振り返って思います。

 

 

 日本にはピアノが上手な人がゴロゴロといる中、そんな簡単に獲れるはずがないと思いつつも、先生の言葉を信じたい、先生の期待に応えたい、そしてこれまでのピアノ人生で何か成果を残したい、という気持ちが私の中でありました。

 

 私の家には小さなアップライトピアノがありますが、お世辞にも良いピアノとは言えません。

10年以上前に中古で安く買ったもので、私含めた兄弟3人によって長年使い倒されてきた上、2年以上調律をしていませんでした。特に音のずれがひどく、先生に家での録音を送るのが恥ずかしいくらいでした。

 

 

 コンクールが始まる前に調律を予約したのですが、調律屋さんが来られるのが予選が全て終わった後でした。

これも、調律が無駄にならないように予選突破せねば!というモチベーションの一つに結果としてはなったのですが、家のピアノでは練習にならなかったので暗譜が終わってからグランドピアノが弾ける練習室に頻繁に通いました。

 

 

 本番の2ヶ月前から月2、1ヶ月前から週1、1週間前は週3で色んな練習室を周りました。これがとても効果的な練習につながったように思います。

 

基本的に練習室では通し練と音色・強弱の吟味をメインで行ないましたが、毎回新しいピアノとで弾く環境ことで、普段は気付かないことに気付いたり、

新しいアイディアが多く浮かんだりしました。

 

 また、知らないピアノでいきなり曲を通す練習をたくさんしたことで、本番でも新しいピアノへの緊張や戸惑いが少なくなった気がします。さらに、利用できる時間が決まっているので、普段だらだらと練習してしまう私もその時間はしっかり集中して弾けました。練習室に通ううちに、アップライトとグランドではやはり全く違うことを痛感し、調律が終わった後も練習室は利用し続けました。ただ、回数を重ねていくと料金も嵩んできて、最後ら辺はお財布と相談しながらでした。

 

 

 今回のコンクールで、先生には中3の全国大会出場した時ぐらい集中できていたと言われたのですが、私としては中3の時より今回の方がよっぽど大変な思いをしたと感じています。その理由は、中3の時は自分で考えて曲を良くするよりも、先生に言われた通りに弾けるようにすることの方が多かったからです。

 

 

 大学生にもなると、曲も長くなり先生にいちいち聞けないのと、やはり自分の中でしっかり曲を解釈していないとそれを音楽に乗せられないのです。

一つの音をどんな音で弾きたいか、どんなイメージを伝えたいか、どのような姿勢とマインドセットで弾けばそのように弾けるか、と自力で考えるのにとても労力をかけました。

もちろん、分からなくなったら迷わずレッスンの時に先生に聞きました。

不思議なことに、いくら考えても分からなかったことが、先生に相談するとものの数分で解決してしまうのです。

やはり先生はさすがとしか言いようがありませんね。自力で曲を作り上げていくのは大変ですが、このようにして自分の中で曲のイメージをはっきりさせておくと、本番でたとえミスをしたとしても確実に音楽が審査員に伝わります。実際、審査員が一番見ているのはこういう部分なんだなと私も学ぶ機会になったと同時に、もっと早くこういうことを始めればよかったと少し惜しい気持ちです。なので、まだ若い生徒さんにはぜひ考えて弾くことを少しずつ意識してほしいと勝手ながら思います。自分でやる自信がないと思う方は、まず先生になりきってみましょう。先生ならなんて言うかな、と考えてみるだけでも違うと思います。

 

 

また、本番は一度だけですが、練習の時は色んな弾き方が試し放題です。たとえ先生に最終的に却下されたとしても、こう弾いてみたい!と思ったらまずそれに挑戦して試してみましょう。先生は絶対怒らないので安心してください。

先生が何も言わなかった、もしくは褒めてくれたらそのアイディアは採用です。こうやって少しずつ曲の中にオリジナルの要素を入れて曲を自分だけのものにしていけば、審査員の印象に残るような曲ができあがる上に、曲への愛着も大きくなると思います。

 

 

 今回のコンクールの結果に満足しているかと言われるとそんなことは決してなく、心残りも沢山あります。銀賞や金賞を獲りたかった、本番でもっと上手に弾きたかった、と言い出したらキリがありません。ただ、よく耳にする綺麗事に聞こえるかもしれませんが、銅賞という結果よりもそこまでの過程が自分の糧となっているのだと思います。実際、コンクールを終えて全部振り返ると、本番や賞よりも練習の日々が心に残っています。それに、前までは金賞を獲りたいなんて欲はなかったのに、それを思うのも頑張った証拠なのかなと思うので、それはそれで受け止めたいと思います。